牛スジのハッシュドビーフ 鈴木アキラ レシピ監修

ビーフストロガノフ、ハッシュドビーフ、ハヤシライス、言葉は違うけれど、この3つはほとんど同じものと考えていい。ビーフストロガノフはロシア料理の定番メニューのひとつで、16世紀にウラル地方に住んでいたストロガノフ伯爵家の家伝の一品であったとされている。
食事と料理が好きな当主が深夜、小腹が空いて起きたものの、家人や使用人は全員眠っていたため有り合わせの材料で料理を作ってみたらうまかった事からできた料理だともいわれているが、実際にはその当時の貴族のたしなみであった『開かれた食事会』のために、シェフが作ったものであるようだ。19世紀、帝政ロシア時代にストロガノフ伯爵家のフランス人シェフ長が世に広めた。
ハッシュドビーフもハヤシライスも、このビーフストロガノフをアレンジして日本で作られた料理で、ハッシュがなまってハヤシになったとも、丸善の創始者である早矢仕有的(はやしゆうてき)氏が考案したからとの説もある。カレーの辛いのが嫌いな子供のための料理かと思ったら実は非常に歴史あるものだったというわけだ。
ハヤシライスにはサワークリームを添えないとか細かな違いは色々あるものの基本的には全く同じ料理で、うちでもハッシュドビーフを作って友人に出したところ「これ、なんだかハヤシライスみたいだね」と言われたことがあるが、その友人の舌はかなり正しい。名前を変えて出されると全く違った料理と思う人も多く、それに目をつけたレストランも非常に多いので気をつけよう。それよりも「自分の舌をもっと信じたらどうですか?」と言いたくなる。
ハッシュドビーフは元々薄切りの安い牛肉を使って作られる料理なので、材料にはあまりこだわる必要はないと思う。今回、牛肉の最も安い部位である「牛スジ肉」を使っているのもそのためだが、牛スジは肉よりも歯ごたえや舌触りが楽しく、最近女性に人気のコラーゲンとやらがたっぷり入っていて、もっと見直されてもいいのにと僕は常々思っている。
牛スジが敬遠されがちなのは、その下ごしらえに手間と時間がかかるせいなのだろうけれど、圧力鍋効果の高いダッチオーヴンなら短時間で柔らかく煮ることも可能で、非常にダッチオーヴン向きの食材といえるだろう。
ハッシュドビーフは御飯にかければハヤシライスだし、ベイクドポテトやマッシュポテトにかけて食べてもうまい。スパゲッティのソースとしても最適だ。キャンプでたくさん作ってもアレンジの方法はたくさんある。是非チャレンジしていただきたい。
材料
・牛スジ肉 800g
・ベーコン 5~6枚
・タマネギ 2~3個
・ジャガイモ 8~10個
・ニンジン 1本
・マッシュルーム 2パック
・ニンニク 3かけ
・パセリ 1束
・レモン 1個
・小麦粉 大さじ3
・野菜ジュース 250cc
・トマト水煮缶 1個
・サワークリーム 1個
・バター 50g
・オリーブオイル 大さじ3
・ウスターソース 大さじ2
・赤ワイン 200~250cc
・コンソメ 小さじ3
・塩 小さじ1
・クローブ 6~8粒
・シナモン 小さじ1
・タイム 小さじ1
・ナツメグ 小さじ1
・ローレル 2~3枚
・カイエンペッパー 小さじ1/2
・ブラックペッパー 小さじ2
作り方
・牛スジは下茹でしてアクを取り、食べやすい大きさに切ってから柔かくなるまで煮込む。
・ジャガイモは皮付きのままボイル、もしくはベイクするが芽はしっかり取っておこう。
・タマネギのうちの1個はみじん切りに、残りは串切りにする。
・ニンジンはみじん切りにする。
・ベーコンはみじん切りにする。
・レモンは絞って果汁のみにする。
1)タップリのオリーブオイルでニンニクのスライスを炒める。弱火でじっくり香りを出すのがポイント
2)みじん切りにしたニンジンとタマネギ、ベーコンを加えてさらに炒める
3)小麦粉を加えてとろみを付ける
4)トマト水煮、野菜ジュース、ローレル、クローブ、シナモン、ナツメグ、塩、ウスターソースを加えてフタを取ったままの状態で20分ほど煮詰める。これがブラウンソース。煮詰まったブラウンソースは別の器にあけておく
5)下茹でして食べやすい大きさに切った牛スジをバターで炒める
6)スライスしたマッシュルーム、串切りにしたタマネギを加えてさらに炒める
7)赤ワインを加えて煮込む
8)手順4でよけておいたブラウンソースを加える
9)コンソメ、塩のほか、ブラックペッパー、カイエンペッパーなどの各種スパイス類を加えて味を整える。カイエンペッパーは非常に辛いので少しずつ量を加減して加えるといい
10)ボイルもしくはベイクしたジャガイモに添えてサワークリームを加える(もちろん白い御飯でもいい)。サワークリームを加えると味にぐんと深みが出るので忘れないこと
11)きざみパセリを散らして出来上がり
ワンポイント

・牛スジの下茹では2~3回茹でこぼして、しっかりとアクを取ることが大切。
・牛スジを切ると脂がまとわりついてナイフはすぐに切れなくなる。キッチンペーパーで刃をこまめに拭く、シャープナーでタッチアップするなどの作業が肝心。
・ニンニクを炒める時には火は絶対に弱火で、じっくり時間をかけて香りを出すこと。強火にして焦がすと苦みが出て台無しになる。
・ハッシュドビーフはカレーと同様、煮込むほどに味が良くなる。たくさん作っておこう。
・マッシュルームなどのキノコ類は煮込むと小さく縮んでしまう。煮込む際には軽くソテーしたものをその都度加えるといい。
・サワークリームがない場合はクリームチーズやヨーグルトで代用可能。

レシピ監修

鈴木アキラ

アウトドアライター。アウトドア雑誌やキャンピングカー雑誌、自動車雑誌等に寄稿。特に野外料理系の仕事が多い。アウトドアイベントの講師をはじめ、テレビやラジオの仕事も多く、ラジオ番組「電話子供相談室」の回答者にもなったりもするが、家にはテレビがない生活。
青森育ちでネイティブに東北弁を使いこなすほか、沖縄好きが高じてウチナーグチ(沖縄方言)もオバアと会話できるほどに。田舎のオバアチャンたちに郷土料理の作り方を教わるのが大好き。
「野外料理超簡単レシピ555」「キャンプで活躍! ナイフ・ナタ・斧の使い方」「これだけは知っておきたい サバイバル術食入門」「燻製&保存食作り入門」(いずれも山と渓谷社)など著書多数

今回使用した製品
  • キッチンオーヴン10 1/4インチ

    ロッジ社の多年にわたる研究により、すぐに使える慣らし済みダッチオーヴン「ロッジロジック」長年使い込んだもののように表面がコーティングされ風格ある製品に仕上がっています。カバーは スキレット 10 1/4インチと共用が可能です。

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