ラムのトマト煮クスクス添え 鈴木アキラ レシピ監修

これは僕が昔、北アフリカで教えてもらった家庭料理のひとつだ。基本食材は羊肉と完熟トマト。トマトの原産はペルーやアンデスの高地あたりだと聞いたけれど、強い太陽の光を浴びて育った北アフリカのトマトは、味が濃くて本当においしかった。
日本ではつい最近まで北海道以外羊肉を食べる習慣が少なかったのだが、テレビなどで「羊肉は体に脂肪がつきにくく健康にいい」とアピールされてから一気に広まり、東京でも一時ジンギスカンブームになったことがある。
北海道は羊毛産業が盛んだったから昔から肉といえば羊であり、ジンギスカン鍋のない家はない。友達と集まるといえばジンギスカン、親戚が来たといえばジンギスカンなのだ。内地の河原であれば「バーベキュー禁止!」と書いてあるような場所でも、「バーベキュー」ではなく「ジンギスカン禁止!」と書いてある。このくらいメジャーな料理だ。昔は羊毛産業の余りのような形で生産されていた羊肉で、安価な肉の代表だったのだが、現在は食用として育てられており、国内産の羊肉は牛肉よりもはるかに高い値段になっているものもある。特に国内産サフォーク種の羊肉は「幻の羊」とまでいわれているとか。ちなみに羊肉は子供の頃はラム(親の乳しか飲んでいない赤ん坊をベビーラム)、大人になるとマトンと呼ばれている。
宗教上の理由も含め「肉は羊肉」という国は、世界中とても多い。モンゴルもそうだし、イスラム圏はほどんどそうだ。かのキリストの両親も羊飼いであったというから、キリストも羊肉を食べて育ったのであろうと想像される。北アフリカでも通常、肉といえば羊肉のことをさす。
羊肉を食べる習慣のなかった内地の人の中には、羊肉の特有の香りが苦手という人もいる。僕などはニオイのしないラム肉よりも、ニオイの強いマトンの方が「いかにも羊を食べている」という感じで好きなのだが、どうやらそうでない人もいるらしい。そのニオイ消しの意味もあるのか、この料理にはローズマリーというハーブが使われている。ローズマリーは防虫効果、殺菌効果が高く、キリストの産着に「香」として使われていたそうだが、確かにさわやかないい香りがする。レストランで「ラムの香草焼き」というレシピに使われているのはたいていこのローズマリーだ。羊肉とローズマリーはペアで覚えておくといいだろう。
今回、料理に合わせているのはクスクスという世界最小のパスタ。これも北アフリカではよく使われている。見た目は小鳥のエサのようでもあるが、お湯をかけるだけで戻すことができ、茹でたお湯の処理をしなくてもいいからキャンプにも持ってこいだ。 僕が教わった(というより、御馳走になった)時に使用していた鍋は土鍋であったのだが、時間をかけてコトコト煮る料理にかけてはダッチオーヴンも負けてはいない。負けてはいないどころか、重たいフタの圧力鍋効果のおかげで土鍋よりはるかに短時間で仕上がる。ダッチオーヴンお得意の仕込んでしまえば後は待つだけの料理だし、合わせているクスクスもご飯を炊くよりもよっぽど簡単に仕上がる。
アウトドアに最適な北アフリカの家庭の味を、是非味わっていただきたい。
材料
・ラムあばら肉 2ブロック
・タマネギ 1個半~2個
・完熟トマト 4~5個
・トマト水煮缶 1個
・ニンニク 2かけ
・ローズマリー(フレッシュ) 5~6本
・顆粒コンソメ 小さじ2
・オリーブオイル 大さじ2
・ブラックペッパー 小さじ1
・塩 小さじ1
作り方
・ラムがあばら肉の塊の場合は骨と骨の間にナイフを入れて切り分けておく。もも肉の塊などの場合は食べやすい大きさに切り分けておく
・羊肉特有の香りが苦手な人は脂身を切り取っておくと香りがやわらぐ
1)スライスしたニンニクをオリーブオイルで炒め香り付けをする。鍋を傾けてオリーブオイルの溜まりを作り「オイルで煮る」という感じ。火は弱火で決して焦がさないこと
2)切り分けたラム肉を加えて、肉の表面の色が変わるまで焼く
3)タマネギはみじん切り、もしくは串切りにする
4)トマトはヘタの部分を切り取っておく
5)タマネギとトマトを加える。トマトは手で潰して入れるのがポイントだ。ゆっくり潰さないと汁が飛ぶこともあるので注意。トマトは完熟したものを使うこと
6)ローズマリーを加える。そのままではなく、中心の枝から細い葉を外して使うこと
7)トマトの味が薄いようならトマトの水煮缶を加えて味を濃くする。コンソメ、塩、ブラックペッパーで味を調整する。
8)肉が柔らかくなり、骨から簡単に外れるようになるまで煮込んで出来上がり。水は一切加えず、トマトとタマネギから出る水分だけで煮込む
9)クスクスは基本的にクスクスと同量(重さではなく体積)のお湯(沸騰したアツアツのもの)を加えて、フタをして5~7分おくと出来上がる。パスタなので少量のオリーブオイルと塩で軽く味付ける
10)クスクスにラムのトマト煮をタップリかけて食べる。汁は多めにした方がいい
ワンポイント

・煮込む際の目安は骨と肉とが簡単に外せるようになっているかどうか。ホロリと外せるようならOK
・今回はクスクスにかけているけれど、白いご飯にかけてもいいし、パンと一緒に食べてもいい
・煮込む際に少量の赤ワインを足すと味の奥行きが出てくる
・クスクスはそれ自体に味がないので物足りないという人は、単純にお湯で戻すのではなく、コンソメを溶いたお湯で戻すといい。そのままの時には汁気の多いものをタップリかけて食べるのが基本
・羊の香りが苦手な人はローズマリーをタップリつかうといい
・トマトが熟していない時はトマトの水煮缶を足したり、代用したりするといい
・ローズマリーはじめハーブ類はできるだけ生のものを使うこと。生のものとビン詰め(刻んだドライタイプ)では香りが天と地ほども違う。
・ローズマリーは手のかからないハーブでプランターでも育てやすく、虫も付きにくいのでおススメ。小さくかわいい紫色の花が咲く

レシピ監修

鈴木アキラ

アウトドアライター。アウトドア雑誌やキャンピングカー雑誌、自動車雑誌等に寄稿。特に野外料理系の仕事が多い。アウトドアイベントの講師をはじめ、テレビやラジオの仕事も多く、ラジオ番組「電話子供相談室」の回答者にもなったりもするが、家にはテレビがない生活。
青森育ちでネイティブに東北弁を使いこなすほか、沖縄好きが高じてウチナーグチ(沖縄方言)もオバアと会話できるほどに。田舎のオバアチャンたちに郷土料理の作り方を教わるのが大好き。
「野外料理超簡単レシピ555」「キャンプで活躍! ナイフ・ナタ・斧の使い方」「これだけは知っておきたい サバイバル術食入門」「燻製&保存食作り入門」(いずれも山と渓谷社)など著書多数

今回使用した製品
  • キッチンオーヴン10 1/4インチ

    ロッジ社の多年にわたる研究により、すぐに使える慣らし済みダッチオーヴン「ロッジロジック」長年使い込んだもののように表面がコーティングされ風格ある製品に仕上がっています。カバーは スキレット 10 1/4インチと共用が可能です。

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